大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)5537号 判決

上告人 安田虎盛

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人仁礼愛之の上告趣意について

第一審判決が、証人神薗キミに対する裁判官の尋問調書を証拠に採用していることは、所論のとおりであるが、第一審第三回公判において、適法な証拠調が施行されている証人神園キヨに対する裁判官の尋問(臨床)調書中の同人の供述記載によれば、同人の通称は神薗キミであり、戸籍上の氏名は神園キヨであつて、神薗キミと神園キヨとは同一人であることが認められる(記録七一丁ないし八一丁)。そして、同判決が、前示のように証人神薗キミと表示したのは正確を欠くきらいがあるけれども、結局、第一審では、通称神薗キミ、本名神園キヨという人を証人として尋問した所論の調書については適法な証拠調を経てこれを罪証に供したものであることが明らかであるから、原判決には所論のような訟訴法違反、採証法則違反はない。従つてまた、所論は、名古屋高等裁判所の所論判例に違反するというが、原判決の判示は正当であり所論のような判例違反はない。論旨は刑訴四〇五条の上告適法の理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

昭和二八年(あ)第五五三七号

被告人 安田虎盛

弁護人仁礼愛之の上告趣意

右に対する児童福祉法違反被告事件につき左の通り上告趣意を提出致します。

右被告人に対する福岡高等裁判所宮崎支部のした第二審判決は昭和二十五年三月二日名古屋高等裁判所の判例(高裁特報第七号一五四頁)と相反する判断をして居る。

右第二審に対する控訴趣意書記載の第一点の主張は第一審裁判所が刑事訴訟法第三〇五条の手続を履践しなかつた書面を断罪の資料としたことを判決に影響を及ぼすべき採証法則の違反であると為すものであるが具体的に云へば右第一審に於て神薗キミに対する証人尋問調書は明かに全く朗読せられなかつたものであるから右掲記の判例に相反する判断をして居るばかりでなく而も本件訴訟記録には神薗キミなる者に対する証人尋問調書は存在しないのであるから右の主張を排斥した第二審判決は明に破棄然るべきものと信ずる。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例